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前号の続きです。
公教育の権威の低下
公教育の求心力の低下、そして2002年の学習指導要領の大幅な改定が、中学受験熱を高めたことは間違いありません。
公教育の求心力の低下は結局は、それが戦後GHQが求めてきた姿なのではないかと思えてならないのです。
大学に進学する人がほんの一握りだった時代、大学に行かなければなることのできな教師という職業は、それだけで十分に権威のあるものでした。しかし、多くの人が大学に進学する時代を迎えると大卒といっただけではその権威を担保することができなくなりました。
教育は教える側の権威なくして成立することは極めて難しいことです。友達のような先生、生徒に馬鹿にされる先生では教育は成立しないのです。

市川学園旧校舎 / naosuke iiまた、戦後教育を受けた世代、すなわち戦前戦時中の反動とも言える民主主義の中で育った世代で進んだ「ミーイズム」の影響からか、学級単位、各年単位で行う集団教育が極めて難しくなったことも一因です。
厳しく始動すればクレームの元になり、イベントごとで怪我でもさせれば訴訟云々の問題にまで拡大します。
「義務教育はタダで受けられる」上、完全にお客様化している保護者や生徒と、御用聞きと化している教師との間に教育が成り立つはずもないのです。
そして、現在では加盟率も大分下がってきましたが日教組の常軌を逸した人権教育も大きな要因ではないかと思われます。
祖国を愛する心を育むことはそもそも教育の前提と言いますか、いろはの「い」であるはずです。「世界の国々と比べて日本は…」という言説を垂れるのは極めて遺憾ですが、それが世界標準です。
しかし、そういった基本的なことでさえ「国家権力の不当な介入だ!」などの御託を並べて法制化された入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱までも拒否、そして阻止しようとするのです。
日教組の話は挙げるとキリがありませんが、「早起き、朝ご飯運動は、思想信条の自由に不当に介入する憲法違反だ!」などと、教育と関わりのない人ならお笑いのネタとしか思えない、教職員という極めて狭い世界でさえ通用するのか怪しい議論を日夜繰り広げているのです。
かつて、公立中学校の教員をしていた知人からこんな話を聞きました。「学校は教育現場ではない、権力闘争の場だ」と。

Heiwa elementary school 平和小学校 _19 / ajariしかし、公立学校の教員の人すべてがダメというわけではありません。情熱に燃え、使命感を持って生徒と対峙している人たちもいますし、素晴らしい人格者もいるはずです。教育の仕事は、正直、割の合う仕事ではありません。何年もの苦労の報いが「ありがとう」の一言であったり、逆に「申し訳ない」と謝らなければならないこともあります。しかし、その「ありがとう」を聞きたいがために、命を削って情熱を注ぐ教員も少なからずいるのです。
これらは、学校という形態を取っている以上、私立においても条件は同じとも思われますが、私立は公立とは違い「お上からの縛り」が緩く、独自の方針を打ち出すことができます。その上、私立は、学校に対して不利益をもたらしたり、周囲に悪影響を及ぼす可能性のある生徒は「入試で選別する」ことによって未然に防ぐことができるのです。
民間教育にとっては追い風か
こういった事態を受けて活況なのが学習塾などに代表される民間教育機関です。対象人口は、団塊ジュニア世代と比べて約半分、しかし公教育の権威低下と2002年の学習指導要領の改訂が、中学受験産業を活性化させました。
この状況は、少子化によるパイの奪い合いを繰り広げている学習塾業界にとっては願ってもいない好機でした。
この時期は、様々な分野で規制緩和や民営化が行われてきましたので、このタイミングを思えば、教育までも民営化しようとしていたのか?と疑いの目を持たずにはおれません。

予備校 / sendaiblog実際、私が学習塾にお世話になったのが中学受験を決意した小学6年生の時です。始める時期は遅きに失した感がありますが、それはともかくとして、今ほどではありませんが、このときクラスの多くの同級生が塾に通い始めました。
先生方はそれに不快感を示し、学年便りなどでは「背伸びは禁物です」などと塾通いに関するネガティブキャンペーンを繰り広げていました。
正直その時感じたのは「先生がちゃんと教えてくれれば塾なんていかなくてもいいのに」という思いでした。
一時塾通いが社会問題化し、年末年始は鉢巻きを付けて「ガンバロー」と特訓をしている学習塾の様子がテレビでも取り上げられましたが、学校の先生方の怠慢が起こしたものとも言えるのです。
私自身はこういった責任転嫁の繰り返しが、公教育の不信を増幅していったと思えてなりません。

Heiwa elementary school 平和小学校 _16 / ajariただ、中学受験は高校受験以上に高度な専門知識と教務力が求められます。元来勉強が好きではない小学生にやる気を出させ、方程式などと言った飛び道具を与えることなく内容を理解させ、問題を解かせるようにするには相当な技量が必要です。
傾向としては、中学受験に新規参入した学習塾よりも中学受験がブームになる以前に真摯に取り組んでいたところ、あるいは部門ごと買い取ったところが成功を収めています。中学受験は「ごまかしが利かない」ということが伺えます。
よって「ゆとり教育」によって中学受験が加速したとしてもその恩恵に与れるのは、ブームに関係なくしっかりと取り組んできた学習塾に限られると思われます。
となると、この一連の動きは学習塾業界の淘汰と再編を急がせる結果となる可能性を高めているとも言えそうです。
とは言え、私自身は公立否定派でも私立推進派でもありません。大事なのは、子ども達の人格形成や人生観の確立に関わる大事な時期をどういった環境で過ごさせるかです。私立にしても公立にしてもメリット、デメリットがあります。
次回はその点を踏まえて私立、公立のメリット、デメリットについても考えていきます。
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次号に続きます(1/27up予定)】
宮本 毅 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2010-06-16
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